e-Taxでの確定申告用に購入した、ICカードリーダー「PaSoRi RC-S380」ですが、SDKを使うとカード情報を取得することができます。今回は最も簡単なVC++でアクセスする方法を紹介します。
ICカード リーダライタ
PaSoRiは、JRや地下鉄の乗車券として有名な「FeliCa」カードを読み取ることができるデバイスです。別名「ICカード リーダライタ」として呼ばれることもある機器です。
Amazonで2,484円で購入しました。数年に1度モデルチェンジをするので型番(私が購入したモデル RC-S380)は変わっていきますが、仕様は同じで、利用するアプリは継続して使えます。
SDK for NFC for Windows
SONY FeliCa 非接触カード技術のホームページ上にSDK for NFC for Windowsの開発ツールとしてダウンロードすることができます。
評価用として「SDK for NFC Starter Kit」が無償で利用することができます。商用利用時には有償版を購入する必要があります。
ソフトウェアのみの提供なので、当然ですがPaSoRiなどのICカード読み取り装置は自分で用意する必要があります。
SDKは、VisualC++用のヘッダーとスタテックライブラリの形で提供されます。C#などの言語で利用するには、ラッパーのDLLなどを作成して利用することになります。
Visual C++でカード情報にアクセス
今回は、SDK内のサンプルを使わずにVisual Studio 2017のMFCアプリから、Suicaなどの交通系のICカードのカード情報を読み取る方法を紹介します。
といってもICカード内のすべての情報にアクセス出来るわけではありません。今回は、最初なのでカードのシリアル番号的な「IDm」と呼ばれる情報を読み取って、画面に表示するアプリを作成します。
SDKを利用するので、ダウンロードしたファイルを適当な場所に展開して保存しておきます。
1. VisualStudio2017を起動して、新しいプロジェクトで「MFC アプリケーション」を作成します。
2. 「MFC アプリケーション」のオプション選択では、「アプリケーションの種類」を「ダイアログ ベース」に変更して「完了」ボタンをクリックします。
3. 新しいプロジェクトが作成されます。「ソリューション エクスプローラー」の画面で、「NFCApp1Dlg.cpp」(ファイル名は、作成したプロジェクトの名前で変わります)を開きます。
4. ファイルの先頭行に、「#inlude “felica.h”」を追加します。
5. 「プロジェクト|NFCApp1のプロパティ」メニューを選択して表示された「プロパティ ページ」画面の左側のリストから「構成プロパティ|C/C++/全般」を選択します。
6. 右側に表示された一覧から「追加のインクルード ディレクトリ」を選択して、SDK内の「include」フォルダーの場所を入力します。
7. 同様に左側の一覧から「構成プロパティ|リンカー|入力」を選択して「追加の依存ファイル」に、SDK内の「lib」フォルダーを入力します。(x86用とx64用の2種類が用意されているので使い分けます)
8. 「OK」ボタンをクリックして「NFCApp1プロパティ ページ」画面を閉じます。
9. 「NFCApp1Dlg.cpp」の先頭部分に次のコードを追加します。
#include "stdafx.h"
#include "NFCApp1.h"
#include "NFCApp1Dlg.h"
#include "afxdialogex.h"
#include "felica.h"
#define SIZE_OF_IDM 8
#define SIZE_OF_PMM 8
CString format_vector(unsigned char* vector, int length);
#ifdef _DEBUG
#define new DEBUG_NEW
#endif
10. OnInitDialogイベントハンドラーに、次のコードを追加します。
// TODO: 初期化をここに追加します。
if (initialize_library() == TRUE)
{
if (open_reader_writer_auto() == TRUE)
{
structure_polling polling;
unsigned char system_code[2] = {0xff, 0xff};
polling.system_code = system_code;
polling.time_slot = 0x0f;
unsigned char number_of_cards = 0;
structure_card_information card_information;
unsigned char card_idm[8];
unsigned char card_pmm[8];
card_information.card_idm = card_idm;
card_information.card_pmm = card_pmm;
memset(&card_idm, 0x00, sizeof(card_idm));
memset(&card_pmm, 0x00, sizeof(card_pmm));
if (polling_and_get_card_information(&polling, &number_of_cards, &card_information) == TRUE)
{
CString csIDm = format_vector(card_information.card_idm, SIZE_OF_IDM);
GetDlgItem(IDC_STATIC)->SetWindowTextW(csIDm);
if (close_reader_writer() == true)
{
dispose_library();
}
}
}
}
11. インライン関数として次のコードを追加します。
CString format_vector(unsigned char* vector, int length)
{
CString csResult = _T("");
CString csValue = _T("");
int nLoop = 0;
for (nLoop = 0; nLoop < length; nLoop++)
{
csValue = "";
csValue.Format(_T("%02x"), vector[nLoop]);
csResult += csValue;
}
return csResult;
}
すべてのコードを追加したらビルドを行い、PaSoRiにICカード(Suicaなど)を置いて実行をしてみます。
正しく動作すれば、画面にNFCカード内のIDmと呼ばれる値が表示されます。
カードの種類によっては、セキュリティのために読み取れない場合もあるので、注意してください。Suicaなどの交通系のICカードであれば読み取れるはずです。
追加する全てのコード
NFCApp1Dlg.cpp に追加するすべてのコードは次のようになります。
// NFCApp1Dlg.cpp : 実装ファイル
//
#include "stdafx.h"
#include "NFCApp1.h"
#include "NFCApp1Dlg.h"
#include "afxdialogex.h"
#include "felica.h"
#define SIZE_OF_IDM 8
#define SIZE_OF_PMM 8
CString format_vector(unsigned char* vector, int length);
#ifdef _DEBUG
#define new DEBUG_NEW
#endif
// アプリケーションのバージョン情報に使われる CAboutDlg ダイアログ
class CAboutDlg : public CDialogEx
{
public:
CAboutDlg();
// ダイアログ データ
#ifdef AFX_DESIGN_TIME
enum { IDD = IDD_ABOUTBOX };
#endif
protected:
virtual void DoDataExchange(CDataExchange* pDX); // DDX/DDV サポート
// 実装
protected:
DECLARE_MESSAGE_MAP()
};
CAboutDlg::CAboutDlg() : CDialogEx(IDD_ABOUTBOX)
{
}
void CAboutDlg::DoDataExchange(CDataExchange* pDX)
{
CDialogEx::DoDataExchange(pDX);
}
BEGIN_MESSAGE_MAP(CAboutDlg, CDialogEx)
END_MESSAGE_MAP()
// CNFCApp1Dlg ダイアログ
CNFCApp1Dlg::CNFCApp1Dlg(CWnd* pParent /*=nullptr*/)
: CDialogEx(IDD_NFCAPP1_DIALOG, pParent)
{
m_hIcon = AfxGetApp()->LoadIcon(IDR_MAINFRAME);
}
void CNFCApp1Dlg::DoDataExchange(CDataExchange* pDX)
{
CDialogEx::DoDataExchange(pDX);
}
BEGIN_MESSAGE_MAP(CNFCApp1Dlg, CDialogEx)
ON_WM_SYSCOMMAND()
ON_WM_PAINT()
ON_WM_QUERYDRAGICON()
END_MESSAGE_MAP()
// CNFCApp1Dlg メッセージ ハンドラー
BOOL CNFCApp1Dlg::OnInitDialog()
{
CDialogEx::OnInitDialog();
// "バージョン情報..." メニューをシステム メニューに追加します。
// IDM_ABOUTBOX は、システム コマンドの範囲内になければなりません。
ASSERT((IDM_ABOUTBOX & 0xFFF0) == IDM_ABOUTBOX);
ASSERT(IDM_ABOUTBOX < 0xF000);
CMenu* pSysMenu = GetSystemMenu(FALSE);
if (pSysMenu != nullptr)
{
BOOL bNameValid;
CString strAboutMenu;
bNameValid = strAboutMenu.LoadString(IDS_ABOUTBOX);
ASSERT(bNameValid);
if (!strAboutMenu.IsEmpty())
{
pSysMenu->AppendMenu(MF_SEPARATOR);
pSysMenu->AppendMenu(MF_STRING, IDM_ABOUTBOX, strAboutMenu);
}
}
// このダイアログのアイコンを設定します。アプリケーションのメイン ウィンドウがダイアログでない場合、
// Framework は、この設定を自動的に行います。
SetIcon(m_hIcon, TRUE); // 大きいアイコンの設定
SetIcon(m_hIcon, FALSE); // 小さいアイコンの設定
// TODO: 初期化をここに追加します。
if (initialize_library() == TRUE)
{
if (open_reader_writer_auto() == TRUE)
{
structure_polling polling;
unsigned char system_code[2] = {0xff, 0xff};
polling.system_code = system_code;
polling.time_slot = 0x0f;
unsigned char number_of_cards = 0;
structure_card_information card_information;
unsigned char card_idm[8];
unsigned char card_pmm[8];
card_information.card_idm = card_idm;
card_information.card_pmm = card_pmm;
memset(&card_idm, 0x00, sizeof(card_idm));
memset(&card_pmm, 0x00, sizeof(card_pmm));
if (polling_and_get_card_information(&polling, &number_of_cards, &card_information) == TRUE)
{
CString csIDm = format_vector(card_information.card_idm, SIZE_OF_IDM);
GetDlgItem(IDC_STATIC)->SetWindowTextW(csIDm);
if (close_reader_writer() == true)
{
dispose_library();
}
}
}
}
return TRUE; // フォーカスをコントロールに設定した場合を除き、TRUE を返します。
}
CString format_vector(unsigned char* vector, int length)
{
CString csResult = _T("");
CString csValue = _T("");
int nLoop = 0;
for (nLoop = 0; nLoop < length; nLoop++)
{
csValue = "";
csValue.Format(_T("%02x"), vector[nLoop]);
csResult += csValue;
}
return csResult;
}
void CNFCApp1Dlg::OnSysCommand(UINT nID, LPARAM lParam)
{
if ((nID & 0xFFF0) == IDM_ABOUTBOX)
{
CAboutDlg dlgAbout;
dlgAbout.DoModal();
}
else
{
CDialogEx::OnSysCommand(nID, lParam);
}
}
// ダイアログに最小化ボタンを追加する場合、アイコンを描画するための
// 下のコードが必要です。ドキュメント/ビュー モデルを使う MFC アプリケーションの場合、
// これは、Framework によって自動的に設定されます。
void CNFCApp1Dlg::OnPaint()
{
if (IsIconic())
{
CPaintDC dc(this); // 描画のデバイス コンテキスト
SendMessage(WM_ICONERASEBKGND, reinterpret_cast<WPARAM>(dc.GetSafeHdc()), 0);
// クライアントの四角形領域内の中央
int cxIcon = GetSystemMetrics(SM_CXICON);
int cyIcon = GetSystemMetrics(SM_CYICON);
CRect rect;
GetClientRect(&rect);
int x = (rect.Width() - cxIcon + 1) / 2;
int y = (rect.Height() - cyIcon + 1) / 2;
// アイコンの描画
dc.DrawIcon(x, y, m_hIcon);
}
else
{
CDialogEx::OnPaint();
}
}
// ユーザーが最小化したウィンドウをドラッグしているときに表示するカーソルを取得するために、
// システムがこの関数を呼び出します。
HCURSOR CNFCApp1Dlg::OnQueryDragIcon()
{
return static_cast<HCURSOR>(m_hIcon);
}
まとめ
SDK for NFC for Windowsを利用して、Suicaや社員証などのICカードの情報を社内システムなどに活用することができます。
今回は、IDmと呼ばれる汎用的な値を読み取るアプリを作ってみましたが、SDKを使って他の情報にもアクセスすることが可能です。
NFCカードを使ったアプリケーションを開発する方の参考になれば幸いです。
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最後までご覧いただきありがとうございます。